2012年1月25日水曜日

小児歯科医として

本当に月日が経つのは早いもので、小児歯科医として20年になります。

今では、小児歯科学会認定の専門医です。
この専門医については、また後日説明したいと思います。

私が小児歯科医になりたいと思ったのは、まず第一に子供が大好きだからと言う事もありますが、
一番は学生時代に小児歯科診療を見学した時、感銘を受けたからです。

歯科大生は5年生になると講義だけでなく、実際に大学病院での診療を見学しながら学んでいきます。

歯科診療は、一般的には歯を削るのが一番のイメージだとは思いますが、実は様々な分野に分かれていて、学生時代はその分野を個々に習得していくのです。

歯を削って詰める分野 歯槽膿漏などの分野 入れ歯などの分野 矯正歯科 歯を抜いたり、口の中の腫瘍など手術したりする口腔外科 レントゲン等の放射線の分野 そして小児歯科などです。

私が小児歯科を初めて見学したとき、診療が終わっても診療室の歯科医師ひとりひとりに話かけて、なかなか帰らない子供さんがいました。

そして、私たち学生を見て「おまえら、新人か。。。 顔見た時ないな。しっかり勉強しろよ」
「ちゃんと見とけよ。」などと悪態ついたり。

診療が終わり、保護者の母親が診療室に入ってきました。

すると担当医は筆談を始めました。
母親が言葉を話す事が出来なかったからです。

その後、私たち学生は教授に呼ばれ、今の診療内容の説明を受けました。

あのお子さんは、ここに来てから5年以上になります。
ですから、医師やスタッフの顔を全員覚えているのです。そしていつも、診療後は医師やスタッフひとりひとりに嫌味や悪態をついてから帰ります。
とてもおしゃべりなお子さんです。

でも、彼が一番話をしたいのは母親です。

彼は長男歳の離れた兄弟もいます。ですから社会生活において、いつも母親の気持ちや言葉を代弁しているので、少し大人びたところもあります。

本当は、母親に自分の気持ちをぶつけたりしたいのに、長男という立場もあり我慢しているところもあるようです。
彼は、多少つらい治療でも絶対に泣きません。母親が心配するのをわかっているからです。

小児歯科の治療は、保護者と患者そして担当医師の関係がどのように築けているかがとても重要ですと最後に教授はおっしゃいました。


他の科とは全く違う診療風景や説明で、またとても子供の気持ちを大事にしている事がわかり衝撃を受けました。
それまでは、いかに短時間で患者さんに負担のかからぬ様うまく診療していくかが大事と考えていたので、大人の治療と全く違うんだなあと感銘を受けたのです。


また、別の日の見学時は、泣いて暴れて大変なお子さんの治療でした。

しかし、なんどか診療していくうちに、泣かなくなり最後の治療の時は、先生だいすきと言って帰って行ったりしてました。
学生の私にとっては、とても不思議な事でした.

その時の教授の私たちへの説明は、患者さんにとってつらい診療だからこそ十分がんばれるよう励ましながら、ほめながら診療し担当医とのまずは信頼関係をつくる事が大事だとお話してくださいました。


こうして、何度か見学するたびに色んな患者さん個々に対応している先生達の姿を見て、私も小児歯科を勉強したいと考えたのです。

そのため大学の勉強や経験だけでは補えないと思い、大学病院の医局に残って専門的に勉強する必要があると考え、約6年医局に残って学び小児歯科学会認定医を取得し専門医にもなりました。

入局して直ぐ、私たち新入医局員が教授に言われた言葉があります
そしてこれは、私の小児歯科医としての原点の言葉です。


子供にとって、初めて出会う医者は大きな病気や怪我などしない限り歯科医師です。
その時のイメージが、医者というもののイメージを作ってしまいます。
ですから、あなた達はとても重大な責任があるのです。
良いイメージを持って終われる様かんばりなさい。心がけなさい。


20年も前の言葉ですが、私にとってとても大事な言葉です。